「小澤征爾さんと、音楽について話をする」を読む

踊る娘

お正月休みに「小澤征爾さんと、音楽について話をする」を読んだ。私は、クラッシック音楽については全くの素人で、当然二人の間で語られる多くの楽曲をメロディーに変換しながら読むことはできなかったのだが、それでも尚、非常におもしろく読むことができた。それは、インタビュアーとして、超一流の音楽家である小澤征爾から多くのものを引き出すことができる村上春樹のすごさによるものだと思う。この本の中で村上自身が言っていたことだが、読みやすい文章と言うのは必ずリズムがあり、文章にリズムのある作家の作品と言うのは長く読まれ、そうでない作家の作品は、言い回しや内容の奇抜さで一時読まれることがあっても、長く続く事は無いとのことだ。村上作品はものすごく読みやすいが、それは、村上自身が文章のリズムというものに深くこだわっているからだろう。
この世には、素敵な音楽とそれ程素敵ではない音楽しかなくて、素敵な音楽と言うのは、ただただ人を幸せにする。それと同じように、村上春樹の文章がいつだって私を幸せにするのは、彼が素敵な音楽というものをよく知っている人で、まるで音楽のような文章を書く事ができるからかもしれない。
今は「おもちゃちゃちゃ」や「おおきなくいのきをした」や「ありさんごちんこ」を楽しそうに歌って踊る娘に、音楽家になってほしいだとか、作家になってほしいだなんて大それた希望は持っていないが、素敵な音楽と本がそばにある人生をおくらせてあげたいと思っている。長じた娘がどんな本を読み、どんな音楽を聴くようになるのか、それを思うと楽しみでならない。