出産後のこと

出産後、一番辛かったのは、出産した当日〜翌日丸一日絶食、3日目にようやく3分食(お粥と離乳食のようなおかず)だったことである。手術中からすでにお腹がすいており、これが終われば夕食や、とウキウキしていたところ、何も食べられない事を知って相当ショックであった。もちろん、栄養剤の点滴を打つので空腹で耐えられない、なんてことはないのだが、やはり何を食べてはいけないと言うのは私似とって相当辛いことであった。
さらに辛かったのは「ヒマ」と言う事である。自然分娩のお母さんであれば、出産後すぐに母乳をあげたり、おむつの替え方、沐浴の仕方を習ったりなどいろいろ忙しく過ごす事になると思うのだが、私は直に母乳をあげられないので、3時間おきに搾乳してNICUに届ける、と言うことだけが目下の仕事。NICUに入って子供に面会出来る時間も限られており、それを除くと、入院生活は相当にヒマなのである。しかも、産後は目が疲れやすい、と言うことで母が渋ってなかなか本を持って来てくれず、しょうがなく、病院の図書館でそれ程読みたくも無い小説を数冊借りて来て暇つぶしをするしか無かった。
体重の方は、出産前57kg、出産後53kg、退院後は51.5kgで、妊娠前の体重に戻るのはそれ程苦労無さそうである。ただ、それ程大きく無かったとは言え、お腹も少し伸びて、骨盤も広がっているようなので、妊娠前にはフツウに穿けていたジーンズやパンツが今はかなりきつく、これを元に戻すのには数ヶ月かかりそうだ。
今、私は毎日母乳を絞っているのだが、助産師さんによると、母乳は100mlあたり70kcalもあり、これを体内で生成し排出するだけで相当なエネルギー消費になるらしい。母乳育児中はいくら食べても太らない上、足やお尻、腰の脂肪が母乳になるので、自然にダイエットできるとのこと。私自身、搾乳を始めてから確かに食欲は激増し、入院中は病院食だけでは当然足りず、毎日母に果物やヨーグルトを届けてもらい、更にコンビニでアイスやおやつを買って食べ続けていた(しかも運動量はほぼ0)にも関わらず、体重は全く増えなかった。
結局、私の妊娠生活は8ヶ月で終わってしまった。妊娠初期は切迫流産で不安な日々を過ごし、中期は大きくなっていくお腹に恐怖を感じながら、早く生まれて欲しい、身軽になりたい、と願い続け、ようやく後期に入ってラストスパートだと思っていた矢先の緊急出産。言ってみれば、願いが叶って早くに妊婦生活と別れを告げたわけだが、出産後1週間経った退院前日、フト、妊娠中の生活を思い出し、実はあの頃はものすごく、ものすごく幸せな日々だったのでは、と突然感傷的になり暗い気持ちになった。それと同時に、普通分娩で出産出来なかった事に対して、誰もが通るべき道をズルして通らずに済んだ様な罪悪感と言うか、後ろめたさのようなものに襲われる。マア、一晩明けると憂鬱はすっきり去ってしまっていたのだけど、多分、これこそ、世に言う出産後マタニティブルーだ。
何はともあれ、母になってしまった。まだ子供が入院中で常に側で世話をしているわけではないので、なかなか母らしい実感もわかないのだけどねえ。