曇り

仕事を辞めて一番にしたかったこと、それは爪を伸ばしてマニキュアを塗ること。
せっかく安価でネイルケアができる中国に居ると言うのに、食品会社に勤める身として、爪を伸ばすこととマニキュアを塗ることはご法度だったので、たまの長期休暇にケアをするくらいで、普段は、もともとどんぐりのような爪をきっちり切りそろえていた。で、1週間前くらいから爪を伸ばし始めたのだが、爪が弱いのか、はたまたがんがん家事をするのが原因なのか、すぐに先が割れてしまうので結局長く伸ばせず仕舞い。しかも、一昨日、ケアをしてもらって早速マニキュアを塗ったのだが、1日なんやかんや活動してふと爪を見るとすでに半分が剥がれてしまい、見るも無残な姿となってしまった。
さて、特に大きなことはしていないのだが、ゆっくりする間もなく休日が過ぎていっている。在職中お世話になった人々に退職の連絡をし、紙に殴り書きしていたレシピをカードに作りなおし、使いかっての悪かったナプキンホルダーをアレンジし、小さな収納棚を買ったのをきっかけに、ぐちゃぐちゃだった台所の棚をすっきりさせ、グリンピースが出回り始めたので大量に買ってせっせと鞘から出してブランチング冷凍保存し、クッキーとフィナンシェとタルトとイチゴアイスを作る。ほとんど家事の延長なのだが、こうした瑣末なあれこれをやることが私は本当に好きだなあ、と思う。
この休み中にひとりで、いろいろなことをやりながら、いろいろなことを考えていた。私の趣味は基本的に浅く広くで、お菓子作りに凝ったり、自転車に凝ったり、ジョギングしたり、泳いだり、本を読んだり、映画を見たり、音楽を聴いたり、何か切り貼りして作ったりすること全てに喜びを感じる。ただ「コレに関しては誰にも負けない」とまで熱烈にはまっているものは無く、昔は何かひとつでもオタクレベルにまで到達している人をうらやましく思うこともあったが、今となれば「広く浅く」も悪くないと思うのだ。正直、中国は日本に比べるとフツウに生活していて手に入る娯楽が少ない。もし私の趣味がワインだったり、グルメだったり、ガーデニングだったりすると、ここでの生活は苦痛に違い無い。が、私が好きなことはどこに居ようが大抵大きな問題なく出来るものなのだ。しかも、広く浅くが功を奏し、ひとつふたつ揃わなくとも、常にやりたいことが溢れていて暇をもてあます、なんてことはほとんど無い。
幸せと言うのは気の持ちようである、と言う至極当たり前の結論に至ったのであった。