乙未/晴れ

中国人学生、王ちゃんの寮へアサちゃんと共に遊びに行く。中国の大学は基本的に全寮制で、3年生までは6人部屋、4年生は4人、院生は2人か外に住むと決まっている。と言っても、近所の大学に通う子は籍だけ寮に置いて実家に帰っているらしい。一体どんなにすごい所なのかと心配していたが、思ったより新しくてきれいだった。しかも、予想外にパソコンを持っている人も多く、王ちゃんの部屋も6人中彼女を含め2人が自分用のパソコンを持っていた。値段は日本と同じくらい、つまりパソコンを持っている学生はちょっといい所の子供と言う事だろう。
驚いたのは、彼女達のパソコンの使いこなしぶりだ。中国は現在規制が緩いため、海賊版の安いCDやDVD等が廉価で出回っている事は有名だが、インターネット上ではさらに音楽もゲームもドラマも映画もアニメもほとんど無料でダウンロード出来るのだ。ちなみに最近日本で始まったばかりのアニメの「NANA」もすでにこちらに流れて来ており、王ちゃんはすでに中国語字幕付きをダウンロードしていた。
王ちゃんの友達には最近はまっているゲームを見せてもらったのだが、こちらは1ヶ月30元(500円弱)払うと言うだけあってかなり本格的なものである。日本のゲームセンターで昔流行った(今も流行っているのか?)画面の指示通りにステップを踏むリズムゲーム(?)で、わざわざ専用シートをパソコンにつなぐ必要がある。これは一種のオンラインゲームになっており、ネット上でエントリーして見知らぬ相手とダンスバトルをすることができるのだ。自分のアイコンには自分の部屋があり、自分の好きな服を買って着せることも出来、たまごっち感覚で楽しむ事もできるとか、できないとか。
また彼女達はチャットをかなり頻繁にやっているようなのだが、その最中自分の写真(当然パソコンはカメラつき)を平気でアップしていることに驚いた。私達が一緒に写った画像をアップしようとするので、慌てて「えっ、イヤだ」と言うと「なんで?」と全く気にしていない様子で、嫌がる理由もあまりよくわかっていないようなのだ。
パソコン、ひいてはインターネットが一部の特別な人だけのものではなく、一般家庭に普及していき、現在の様な巨大な市場になるきっかけを作ったのがウインドウズ95と考えると、日本やアメリカは大体10年程かかって今の状態に行き着いたと言えるのだが、中国で一般の人に普及し始めたはここ数年のことだろう。すでに巨大化した状態でなだれ込んで来た為、それに対する恐怖心や危険性に対する観念は培われないまま、その便利さのみが受け入れられていく。無料のダウンロードと言うのは単純に規制する方が全く追いついていないと言うことで、今この国のネット世界には著作権と言ったものは無いと言って等しい。まあ世界中どこでも、インターネットの便利さに付随する多種多様な問題はますます増えてますます複雑化している状態で、およそ完全な問題の解決等あり得ない様にも思えるわけなのだが、ここ中国に関しては結局のところ全て「中国は大きすぎる、人が多すぎる」と言う問題に辿り着くのだ。
今、こうして文章を書きながら(打ちながら)思う、私の文章はどんどん中国語の作文のようになっているのだった。