壬子/晴れ

昨日の続き。家族の写真の後、昨年の夏に友人と撮ったのを出すと、それを見た瞬間ケイちゃんから「この時の方が、あなた、太っている」と言われる。夏は毎年少し痩せているはずなので、それを見て太っていると言う事は、私はこちらに来て痩せたということなのだろうか。いやそんなはずはない、明らかに食べる物は油物が増え、量自体も増え、しかも運動量は減っている。特に太ったとも思わないが、痩せてはいないだろう。元から居る留学生達が口をそろえて言う事は「こちらに居る間に、絶対太るよ」と言うことである。中国語で”太る”と言うのは肉月に半と書いて「pang」と読む。この発音はあまりにもその意味にぴったりで、私は「pang」と言うのを聞くたびパンッと膨らんだ自分を想像し、戒められる気分になるのだ。
言葉の響きと言うのはおもしろい。例えば中国語の「pang」の様に、英語の「dull」もその意味と発音がぴったり合っている為印象に残り、高校の時覚えて以来未だに忘れられない単語のひとつだ。そして実はこの「言葉の響きと意味」と言うのが、毎週ある新出単語の聞き取りテストの勉強をする際に大きく影響するのである。日本人は良くも悪くも漢字を使える為「音→漢字→漢字の意味」となりがちなのだが、当然この方式だと会話や聞き取りには非常に不利であり、最終的には「音→意味→その意味の漢字」とならなければならない。が、とりあえず今はほとんど前者の方式で語彙を増やしている。そうやって覚えているうちに、いくつかの傾向があることがわかった。まず単純に、日本語読みと近いものは覚えやすい。反対に程遠い読みのものは覚え難いが一度覚えるとなかなか忘れない。例えば”矛盾”は「maodun」と読み、日本語の”mu”に当たる部分が”mao”になるわけだが、元々一文字の読み方が二文字に変換している為、最初なかなか覚えられなかった。が、一度入ってしまうと逆にもう忘れない。そして最も覚え難いのは、声調だけ違う同音異義が数多くあるものである。例えば先に出た「maodun」には同音異義が無く、声調を間違えていても通じる可能性は大きい。しかし例えば”世紀”は「shiji」となり、声調だけ違う同音異義は史跡、史籍、実際、詩集など辞書をひくと17もある。つまり、声調を除外して音だけが特徴的なものを意味とつなげるのは比較的容易なのだが、そうではないものが難しいと言う事だ。と言っても、中国語は音と声調とを合わせて意味をなすものなんだから、こうして声調を音と別にして考えている時点で自分がまだまだと言う事を露呈しているのだな。中国語発音マスターへの路は程遠し。