丙午/晴れ

ものすごく良いお天気の土曜日、なのに、ほとんど一日机に向かって過ごした。好きな事をしているので苦痛では無いものの、病気でもないのに一日中外に出ないなんて、と罪悪めいたものをを感じる。明日はジョギングの時間を少し長目にする予定。
山田風太郎「明治バベルの塔」読了。

本を読むのは夜寝る前と決めているので、読み終えるのに1週間もかかってしまった。山田風太郎はこれまで忍法帖シリーズしか読んだ事が無く、明治物は初めてである。忍法帖程ぶっ飛んでいないけど、史実を元にして奇想天外な小説を作り上げられていてい違うおもしろさがある。金井美恵子の文庫解説に以下の様にある。

唖然とするばかりに奇妙な鮮やかさを持った不合理こそが、山田風太郎の小説の世界なのであり、そこに読者は娯楽に徹して洗練された小説技術が浮かべている歴史意識のアナーキーな冷徹さを読み取る事になる。

「奇妙な鮮やかさを持った不合理」とはまさしく言い得て妙ではないか。
中国に居て中国語を学びながら私は今、ちいとも日本から遠くならない自分を日々感じるのだ。それは例えば、中国がイヤだとか、日本が恋しいとかの感情から生み出されるものではなく、日本に居る時は深層にあって特に意識しない、自分が日本人であると言うアイデンティティの様なものが、失われるのを恐れて表層近くまで出て来てじいと見守っている、とでも言おうか。いやはや、果たして「言い得て妙」から程遠い言い回しだな。自分が考えている事をうまく表現出来ないのはもどかしい。