晴れ

中国で生活を始めてもう2年半になる。日本での長い一人暮らし生活で培った、私を守って早々簡単には崩れないであろうと考えていた「私の砦」は予想外に、あっという間に風化していっている。私の砦は鉄筋ではなく、レンガでもなく、火がつくとあっという間に燃えて灰になってしまう木だったのかもしれない。
それなりに思い通りになる人生を歩んできてしまっただけに、すっかり打たれ弱くなってしまっていたことに、この年になってようやく気づく。どこに居ても自分の強さを守っていけると信じていたのだが、それは単に、自分が「強い」と錯覚していただけなのだと思い知らされた。京都の街で自転車のペダルを踏みながら、睡眠時間を削ってでも何かを追いかけていた時の自分と、今、ここで生きる自分とのギャップに、たまに呆然としてしまうことがある。
内心の葛藤を吹っ切ることはそう簡単ではない。
ケンタロウさんの日記を読み、ババさんが亡くなられた経緯を知った。死を、予想外の死を受け入れるのは難しい。
先月日本に帰った時、ひよりちゃんからレーズン酵母パンのレシピをもらったのだが、見ているだけでむくむくと、作りたい、気持ちが高まってきたので、オーブンを見にいった。台所のスペースから考えると、レンジとの一体型の方が好ましいのだが、値段やオーブンの性能的には単独のものの方が良いに決まっている。ここしばらく買うかどうか迷っているブリーフケース(800元)を買わず、オーブンを買うべきか。恐らく秋ごろまで悩み続けるに違いない。