乙酉／曇り

フーちゃんが帰って来た。
なんだかんだといろいろあって大変だったようで「やっぱり大連はいいわー」としみじみ言う。と言うのも大連ではほとんど感じることの無い「反日」の風を至る所で感じた、と言うのが最も疲れた原因らしい。大連は日系企業が多いので街全体が親日だし、私達が普段接する中国人の学生も日本語を勉強している人達なのだ。それでも皆やはり「小泉」と「靖国」の話題ははずせないキーワードのように出てくる。私はこちらで新聞やニュースを全く見ないので、一体中国のマスコミで日本はどのように報道されているのか詳しくは知らないのだが、なんとなく想像はできる。マスコミを利用して国民感情を統制するのはこの国の常套手段なのだし、それを皆がまるきり信じるとも思えないのだが、まるきり信じないとも言えない。政府が反日感情を高めるよう仕向ける時はつまり、政府内部になんらかの後ろめたい事情がある時で、その責めの矛先を換える為に都合良く「反日感情」は利用されると言う。
フーちゃんは万里の長城へ行く間2時間近くずっと、タクシーの運転手に日本の歴史教育やら靖国問題やらについて議論をふっかけられて四苦八苦してしまったらしい。しかも帰りの汽車の中では一部のおじさん達が反日話題で盛り上がっていた為「日本人とばれたら大変な目に遭うのでは」と怯えて、必死で中国人らしく振る舞い、出来るだけ言葉を発しない様にしていたそうだ。マア、そこまで怯える必要は無いと思うのだが、日本語でさえうまく説明出来ないことを、今の語学力で何が言えると言うのか？
なんだか、自分がとんでもないぼんやりに思えてしまったのだった。