辛卯/晴れ

暖かくなって来たので、ジャージを脱いで今朝から半袖で走る事にした。これから夏になるまでがジョギングに一番良い季節なのだ、と気持ちが浮き立つ。そんな浮き立った気持ちを一気に沈める事がおこった、と言うのはまあ自業自得とも言えるのだが。
一昨日、毎朝ジョギング中すれ違うおじさんに「今は連休中だから、今度街を案内してあげよう」と言われる。一瞬大丈夫か、と言う気もしたが、いつも笑顔の優しいフツウのおじさんだし、ジョギング好きに悪い人はいないだろう、と軽く承諾したのが大間違いだった。
朝ジャージで会うおじさんは、本当に気の良いそこらのおっちゃんと言う感じなのに、寮まで高級車で迎えに来たのは趣味の悪いサングラスをかけ、髪を整髪剤でテカらせた成金風おやじだった。それを見た瞬間、私は誘いを受けた事を強烈に後悔したのだが、まさかそこでいきなり断ることもできず、とっさに用事があるので2.3時間しか時間がないと言う嘘だけはついておく。
車に乗せられて辿り着いたのは、高級ホテルの貸し切りの部屋で、10人以上座れそうな大きな円卓に向かい合わせになり、おじさんがばんばん注文する海鮮料理を半ばやけになりながら食べる。話の合間に何度も「美しい」「美しい君に乾杯」を真顔で連発するおじさんに、吐き気を催しながら3時間耐え抜く。人ごとだと笑い話に過ぎないのだが、当事者としては相当しんどかった。
そんな苦痛に満ちた3時間の中で唯一良かったのは、給仕をしてくれていたホテルの青年が、日本人と話すのは初めてと言う素朴なとても感じの良い子だったことだ。彼と話すのは本当に楽しかった。そしておじさんが、この青年や他の服務員全般に対する態度がものすごく横柄であることも、益々私の嫌悪を増進させていったのであった。
全く思い出すのもイヤなおぞましい3時間だった。がここに記しながら、自分のアサハカさを戒めているわけである。こちらに来て中国や中国人に対して全くイヤな思いをしていないと言うわけではない。が、こんなに憂鬱にさせられたことはない。何しろ毎朝すれ違っている人なので、これから走る時間か場所を変える必要が出来たわけだ。面倒くさい。
で、よく考えてみれば、学生時代同じ様にジョギングおじさんにつきまとわれて困った経験があったのを思い出したのだった。歴史は繰り返す。